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<< ぱちぱちおへんじ  |  さよならメモリーズ >>

3z


t/e/l/e/s/t/i/c f/a/k/e s/h/o/w

な気分で3Zぎんひじ。




「        」

じわじわと広がっていく熱とともに痛み始めた右手の甲を眺めながら自分は悲鳴に似た言葉を投げつけ、逃げるように走り去った土方の遠ざかっていく足音をぼんやりと聞いていた。

どうしたんだろう、

小首をかしげてため息とともに吐いた言葉は、廊下の冷えた空気にあっけなく飲み込まれてしまったけれど、己の中でくすぶり始めた灰色がかった冷たい感情は消えることなく、まるで薄く水面を覆う氷のように、静かに己の心を侵していった。
なんとなく居心地が悪くて、今この自分の置かれている現状を否定したくて、土方にはじかれた甲を爪で少しだけ引っ掻いた。熱をもった皮膚の上に、新たな熱が上書きされる。己の皮膚に残る痛みという名の土方の記憶がほんの少しだけ薄れていくのをもったいないとは思ったけれど、それでもやっぱり否定したかった。

ほんの少し指を伸ばしてその漆黒にふれようとしただけなのに。

なにもあんなおびえたような顔をして、おそろしいものを見るような目をして睨みつけて、けがらわしいものを拒絶するようにこの手を振り払わなくてもいいのに。不思議と、傷ついたという感覚はなかった。傷つけられたという感覚もなかった。ただただ、甚だ、疑問だった。

ほんの少し指を伸ばしてその漆黒にふれようとしただけなのに。

廊下で土方の姿を捉えたときの、あの気持ちを正しく形容できる言葉を自分は知らない。学校だけでなく、家に帰れば常に顔を合わせることのできる仲なのだから、いい加減落ち着けばいいのにと思いながら、それでもいつまでたってもなれないものはなれないのだから仕方ない。土方を見留めたときの、あの高揚感に似た幸福感。庇護欲に似た独占欲。この世で唯一土方にだけ色彩が与えられたんじゃないかと思えるくらい鮮明に、鮮烈に、この目にうつるのはきっと彼だけだ。これがどんな名前の感情のもとに芽生えるものなのかはわからないけれど、それでも自分にとって名状しがたいほどのものである土方と、同じ空間で夜も朝も迎えられるような間柄に収まることができたのは本当に夢のような奇跡だと自分は思うのだ。
だからこそ、だからこそ。

ほんの少し指を伸ばしてその漆黒に触れようとしただけなのに。

どうしたのだろう、昨日はあんなに柔らかな顔で微笑んで、いまだ発達しきらない声で名前を呼んで、舌足らずな音で感情を紡いで、細い腕をせいいっぱい伸ばして、懸命に。


『――に―――な』


ふいに、土方の声がテレビの砂嵐のようなノイズとともに脳内で反響した。ざらざらと耳障りな音がいとおしい音階を不愉快な和音に変えている。聞いていたい、のに、聞いていたくない。
聞きたく、ない。


『お―にさわ―な』


脳内で壊れたレコーダーのように繰り返し再生されるその声をよくよく聞いてみると、それは決して昨日睦言を紡いだ甘く柔らかな声音ではなく、哀願に近い悲鳴のような、懇願に近い怒声のような、つまり決して自分の土方が発するような声などではなかった。
こんな声を聞いたことなんてないのに。
こんな声を出させるはずなんてないのに。
昨日の土方はあんなに柔らかな顔で微笑んで、いたのに。


『、せんせい』


昨日の土方はいまだ発達しきらない声で名前を呼んで、舌足らずな音で感情を紡いで、細い腕をせいいっぱい伸ばして、懸命に。
懸命に、なにも掴めやしないのに、一生懸命に宙を掻いていた。
まるで助けを請うかのように。
まるで自分から逃れるかのように。
まるで、


『せんせい、やめ、っ』


信じていたなにかに絶対的な狂気と言う名の凶器をつきつけられるかたちで絶望を味わいながら。
まるで力に任せて土方を暴き自らの欲を果たそうとするみにくい大人から逃れるかのように。


『おれが、』


昨日の土方は、


『おれがすきなのは―』


昨日の土方はあんなに柔らかな顔で微笑んで、いた?



「ああ、聞きたくなかったんだっけ」

自分はさもたったいま思い出したかのような声を出し、誰に見せるわけでもないのに右手でこぶしを作って左手のひらにぽんと打った。誰に見せるわけでもない、れっきとした自分へのごまかしであり、見て見ぬふりをしていた現実であり、その現実はたった今ありありと土方が見せつけてくれた。それまで昨日の出来事は、あくまで、ずうずうしいまでに、愚かしいまでに、きれいなものとして己の頭の中に飾られていた。
同じ空間で夜と朝を迎える間柄、それは決していわゆるコイビトドウシなんてものではなかったのに。

ステレオタイプの脅し文句をせいいっぱいの口説き文句にした自分のもとへ、きっと土方は今日も来てくれるんだろう。震えながら、おびえながら、自分の悪意が土方の想い人に届いてしまうことをかたくなに拒むために。


『じゃあ、代わりにシてもイイ?』


君の代わりなんて本当はどこにもいないけれど。
君の代わりなんて本当にどこにもいないのだけれど。

どうしようもないくらい汚い手でとらえた代償に、


「ほんとうに、聞きたくないなあ」


自分は聞きたくて聞きたくてたまらない土方の声を拒み続ける。


『おれに、さわるな』


ノイズがかった世界に響く、全身全霊をかけて紡がれる存在否定の言葉たち。
それでもつながっていられるのならきっときっときっと。










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3ZはなんでかGo☆kanのイメージがあるんですほんと自分最低ですね。
連載とはまったく別のお話です。先生病みー。
それにしてもなんて高い声をお出しになるんだ凛としてのボーカルさんわ。

Tuesday 21:55

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