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おとなとこども


うっかり半分消してしまったので中途半端です。
リハビリです。
お兄ちゃんでも妹でも可能な感じでぎんたま小ネタ。




はらりと薄い布切れのおちるようなおとがした。
不思議に思い、くるりと振り返って己の肩越しにのぞいてみれば、背後でもぞもぞとうごめく朱色に白を混ぜたような色のかたまりをとらえることができた。体を正面に、首だけぐるりと向けてやったので、見知った子供が何をしているのかまで捉えることができず、結局なにをしているのかこれ程にも見当がつかなかった。そうこうしている間にも、はらりはらりと無機質な床に布切れは落ちていく。おとがする。きちんと振り返ってみてやればいいものを、自分はそうしなかった。目の前でぐつぐつと沸騰している鍋の中身が許さないのだ。正確には、突然「素麺が食べたい」などと抜かしやがった万年欠食児童がこの熱湯の中で優雅に踊る素麺を台無しにしてしまうことを、だけれど。

「おーい、なにしてる」

あごの下あたりから立ち上る湯気に辟易しながら、視線を鍋に落としたまま声をかける。年季の入ったガスコンロの火ともうもうと上る湯気に一体何の拷問なのかと小一時間ほど問い詰めたくなった。が、とうとう声帯を震わせることすらわずらわしくなってきたので勘弁してやることにした。というか、開いた口に熱気が入り、そんな気力すら奪われただけなのだが。
つうと頬を伝った汗を乱暴に手の甲でぬぐいとる。遠くで蝉の大合唱が聞こえる。そんなに生き急がなくても夏はそう簡単に終わらないのだからと言いたくなるくらい、全力で鳴いていた、ような気がした。

「んー」

返事なのか単なるうめき声なのか。この炎天下にもかかわらず大合唱で夏を謳歌する蝉どもをすこしは見習ってみろ、と言うのもやはり大層億劫なので、代わりに渾身の思いを込めて、もう一度ぐるりと首を回してねめつけた。見慣れてしまうのも少々空しい雑然とした室内、大きく開かれた窓、その向こうに広がる抜けるような青い空。その下でもぞもぞと動く子供の頭になぜだか既視感を覚えた。はてどこだったか、暑さに溶けた頭で考える。ああそうだ、いつだったか、偶然目にとめることのできた海水に沈む気高い宝石の色だ。そんなことを平然と考え付いているあたり、この脳やら血液やらが沸騰しそうなくらいの暑さにとうとう頭の中の大事な部分がやられてしまったか、と、瞳を閉じてぼんやり思った。
真っ黒い瞼の裏側。
真っ青の空に、珊瑚の色がゆらりとたゆたう。

Wednesday 22:20

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